晴れる屋劇場 -The Cannonball Run-

大久保 寛

ギャザ四駆とは?

 ここは新宿区・高田馬場にある『晴れる屋レーシングセンター』。世界的に大流行しているホビー『ギャザ四駆』でさらなる速さを追求する者たち――”ギャザ四レーサー”が集う、日本最大級のギャザ四駆専門店だ。『マジック:ザ・ギャザリング』のカードをモーターに埋め込み、埋め込んだカードによってマシンの性能が変化するというこのギャザ四駆はレーサーごとに個性豊かなチューンナップが可能となっており、老若男女問わず様々な人に愛されている。

 そして、今日も多くのレーサーが自らのマシンの速さを証明すべく集っていた『晴れる屋レーシングセンター』の中で一際目立っている一組の兄弟がいた……。

まつがん

「いけぇッ! サイクロン《ソニック》!!

J-SPEED

「負けるな! 《ハリケーン》マグナム!!

爆走兄弟まつ&ジェー!!

 コースを縦横無尽に疾走する己が相棒へと、熱のこもった声援を送る2人。そう、彼らこそギャザ四駆を愛する兄弟、人呼んで「爆走兄弟まつ&ジェー!!」である。冷静沈着でコーナー重視《死の影》マシンを使いこなす兄・まつがんと、活発で高速重視《王神の贈り物》マシンを好む弟・J-Speedといえば、界隈では強豪として知られるギャザ四レーサーだ。

 この日もまつがんとJ-Speedの2人は他のギャザ四レーサーたちを遥か後方につけながら熱いレースを演じており、その華麗な走りは観る者を虜にするようだった。

J-SPEED

「うーん、今日こそ勝てると思ったんだけど……」

まつがん

「ダウンフォースが足りないんじゃないか? リヤウィングの角度を2°上げて……スラストを増やして空気抵抗を……空力……E=mc2…………(延々と続く)」

 そんな周囲には目もくれず、マシンの調整に飽くなき執念を燃やす2人。だが、まつがんとJ-Speedのレースに見入っていたのはどうやらまっとうなギャザ四レーサーばかりではないようだった。

 不敵な笑みを浮かべ、2人に近づく怪しげな影。その手にはギャザ四駆が――否。ギャザ四駆と呼ぶにはあまりにも禍々しく、原型を留めないまでに改造が施されたまるで破壊衝動を具現化したかのようなマシンが携えられていた。

破壊衝動を具現化したようなマシン
ドブフクロウ

「ククク……まるでおままごとだな。俺が本当のレースを見せてやるよ」

J-SPEED

「なんだとッ!?」

まつがん

「待つんだ、J。こいつが手に持っている凶器(マシン)、そしてこの殺気……おそらく、相当な手練れだぞ」

 まつがんの直感は正しかった。口元に冷笑を湛えながら兄弟へとレースを申し込む彼の名はドブフクロウ。卑劣かつ残酷なレーススタイルで知られる裏ギャザ四駆界のレーサーで、対戦した相手をマシンともども再起不能へと追い込むならず者だった。

 だが、元より2人は馬鹿がつくほどのギャザ四駆マニアだ。そんな凶悪な男、そして禍々しいマシンを前にして戸惑いと警戒心を抱きつつも、「レースしてみたい」という欲求を抑えることはできず、眼前の男、ドブフクロウとレースを開始したのだった。

ドブフクロウ

「グッド! ではレースを開始しよう」

レース描写

 いざレースが始まると、ドブフクロウの凶器(マシン)が見掛け倒しではないことは歴然となった。ただでさえ公式大会では使用不可能なハイ〇ーダッシュモーターにレギュレーション『ヴィンテージ』でしか使用できない最強カード《Black Lotus》が搭載され、まるで1ターン目から3マナ出るくらいの爆発的な加速力をもたらしている。

 ルール無用の裏ギャザ四駆マシンに瞬く間に兄弟のマシンは引き離され、かつマシン全体を覆う無数の長物がブレーキング(アウトコーナーからのオーバーテイク)どころかテール・トゥ・ノーズ(スリップストリームへの進入)さえも許さない。

まつがん

「ドブフクロウ、きさまこのゲームやり込んでいるなッ!

ドブフクロウ

「答える必要はない」

J-SPEED

「クッ、こんなに差がついてしまうなんて……」

 見る見るうちに広がっていく差。いつの間にか最終ラップに突入し、ドブフクロウのマシンはゴールに向けて爆走を続けていた。

ドブフクロウ

勝ったッ!第3部完!

まつがん

「そ、そうはいくか!!!」

 まつがんのサイクロン《ソニック》が直線コースで強引に前に出る。日頃は冷静沈着なまつがんも、ドブフクロウの想定外のスピードを前に焦りが出た。そして、この迂闊な追い抜きが失策だった。

ドブフクロウ

「かかったな!!」

レイスティンガーされるまつがん
まつがん

お゛ォ゛ん゛ッッ!!!

ドブフクロウ

「残念だったな! どんな手をつかおうが……最終的に……勝てばよかろうなのだァァァァッ!!

 刃の塊のようなドブフクロウのマシンが、まつがんのサイクロン《ソニック》をまるで紙を引き裂くかのように容易く大破させる。ついでに特に理由もなくまつがんの服が弾け飛び、鍛え上げられた肉体が露わとなった。ドブフクロウの高笑いが響き渡る中、勝負は決したかに思われた――。

まつがん

「おのれ……ドブフクロウ…………」

まつがん

Jーーー!!!俺の最期の波紋だぜー!!受け取ってくれーッ!!!!

 断末魔の瞬間、完璧なコンディションに鍛え上げられたまつがんはJに最後の“波紋”――特殊な呼吸法により、体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こし、太陽エネルギー=生命エネルギーを生み出す――を送る。

J-SPEED

「まつがん、受け取ったぞお前の力……この戦いを終わらせるには、“アレ”をやるしかない……!」

 まつがんも再起不能(リタイア)となった今、このままでは敗北は必至。もはやレースとは呼べぬ虐殺劇に成り果てたその戦いを終わらせるべく、Jは禁断の秘策を解禁した――!

J-SPEED

First……Comes……Rock……(マグナムトルネード)

Jさん

 深い水底で何かが弾けるような、鈍く響く打撃音。その拳に込められたのは、天賦の才を持つ者がさらにその才を全て投げ出してようやく得られるほどの力。これは制約と誓約!! 覚悟の証!! リスクはバネ!! 制約と覚悟が大きいほど念は強く働く!!

 Jの一撃がドブフクロウを捉え、マシンともども彼方へと吹き飛ばす!!

ドブフクロウ

「そ、そんな……そんな馬鹿なッ……! グワァァァ~~!!!!

 禁忌の奥義によってドブフクロウをマシンごと吹き飛ばし、苛烈極まるレースが幕を閉じた頃には『晴れる屋レーシングセンター』には穏やかな西日が差し込んでいた。

 これからもまつがん、J、そしてギャザ四駆を愛する名もなきレーサーたちは研鑽を続けていくのだろう。だって、人生というレースに終わりはないのだから――!

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ドブフクロウ

「ぎぃゃぁぁあああ! 軌道を変えられん、も……戻れんッ!」

宇宙空間へと吹き飛ばされたドブフクロウは

2度と地球へは戻れなかった。

鉱物と生物の中間の生命体となり永遠に宇宙をさまようのだ。

そして死にたいと思っても死ねないので

――そのうちドブフクロウは

予備校を開いた。

※これまで不定期でお届けさせていただいていた『晴れる屋劇場』は今回が最終回となります。2年と2ヶ月間ご愛読いただきありがとうございました。

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