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すべての経験を糧に、さらなる高みへ -日本選手権2018レポート-

2018/09/12 00:00 

    • 原根 健太
    • Hareruya Pros Blog

お久しぶりです。原根です。

プロツアー『ドミナリア』マジック25周年記念プロツアーの間隔が非常に短く、その間も海外遠征2つを含む3度のグランプリに参加。非常に多忙なスケジュールでしたが、その甲斐あってなんとか来シーズンのゴールドレベルプロスタートが確定しました。

現在新シーズン前という事で比較的余裕のある状況ですので、久しぶりにイベントレポートを執筆します。

先日の日本選手権2018に参加しまして、ご存知の方も多いと思いますが、結果は準決勝敗退のトップ4。2年連続の日本代表にあと1歩届きませんでした。

本番に向けて考えていたことと、今回の経験から得た学びを皆さんにお伝えできればなと思います。

では早速。

スタンダードについて

この環境のスタンダードは僕にとって地獄でした。

マジックを始めて4年になりますが、自分史上最も負けましたね。負け過ぎてノイローゼになり掛けました。

環境最強と名高い赤黒を筆頭に、次点の赤単・エスパー・青白・青黒・ターボフォグ、もう一つ下がって緑単・青単ストーム・王神…果ては青単アグロに白黒ナイト、青緑マーフォークまで、環境に存在する(かどうかもわからないようなものまで)ありとあらゆるデッキをプレイしましたが、好感触を得られるものが全く見つからず大苦戦。どれもこれも赤黒に対して満足な成績を収めることができず、逆に自分で赤黒を使ってみても良い結果を得ることはできませんでした。

そんな状態で迎えた本番1週間前。使うデッキの候補は一切無く、途方に暮れた状態。適当な赤黒のリストをコピーして当日ブン回ることに期待していた頃です。 グランプリ・リッチモンド2018が開催され、そこでアメリカのプラチナレベルプロであるマイク・シグリスト/Mike Sigristが青黒ミッドレンジを使って準優勝していました。

スカラベの神アクロゾズの神殿

早速このデッキもテストしたところ、このデッキは僕がプレイしてきた中で唯一、赤黒に対する相性の良さを感じさせてくれました。スタンダード環境に『破滅の刻』が追加されて以降散々使い古されてきた戦略、「除去連打からの《スカラベの神》」が有効だからです。ここに《アクロゾズの神殿》が加わると、赤黒側はこれを対処するすべがありません。

ただし、その有利と言うのもホンのわずかなものに過ぎません。他のデッキへの勝率を担保するために入っている《光袖会の収集者》がどうしてもネックになりがちで、1ゲーム目はこのカードを引くと大体負けてしまいます。"ヤツ"が駆け付けて。

ゴブリンの鎖回し

この事から、有利とは言ってもその差は「5.5:4.5」程度。本当の本当に微々たるものなのです。

またフリースロットの多くを対赤黒に割いているため、従来有利だったはずの青系コントロールにはそれほど有利ではなくなるなど、体感「赤黒に少し有利で、それ以外の全てに不利」

本来であればこのような結論になった場合そのデッキをプレイすることはないのですが、僕にはもう他に何も無かったため、「赤黒に (マジでほんの少しだけ) 勝てる?いいじゃん行こうよそれ」となり使用を決めました。正直もう破れかぶれです。

ちなみに今回の調整はラスト1週間のタイミングでTeam Cygamesの市川ユウキさんと連携しながら進めさせていただきました。双方共に赤黒をプレイすることに抵抗を感じており、残りの多種多様なデッキ群を協力して網羅していった次第です。

最終的には互いに青黒ミッドレンジをプレイすることに決まりましたが、ことある毎に"アレ"を振りかざしてくるので大変でした。

『基本セット2019』ドラフト

ドラフト下手で有名な僕ですが、環境末期のドラフトは意外と得意です。(昨年度日本選手権を2-1・2-1、グランプリ・シンガポール2017を5-0-1でトップ8、環境名人戦を過去4回で3-0、3-0、3-0、2-1)

いえ、得意と言うと語弊があるかもしれません。「勝率が高い」がより正確な表現になります。

環境末期はアーキタイプやカードの評価が共通化されているので、それを前提に混雑が予想されるカラーリングを意図的に回避、それらのデッキと競合しないパーツで構築できるアーキタイプを意識して本番に臨んでいます。要はメタゲームを想定した上での決め打ちですね。ドラフト巧者のような巧みな切込みや色変えのテクがあるわけではなく、一定の戦略に基づいて勝負しているわけです。

ペガサスの駿馬星冠の雄鹿暁の天使

例えばこの『基本セット2019』ドラフトに関しては白の人気が特に高いように思います。《ペガサスの駿馬》《星冠の雄鹿》《暁の天使》の「3・4・5ライン」は簡単かつ強力、好きな人も多いですよね。

特にこれらを活かしやすく、完成した時に強力なリストに仕上がりやすい白赤は高い人気を博しています。ゆえに、前述の通り僕はここへの参入に対し消極的です。

僕がこのドラフトで最も好んでピックしているのは「青」です。青はゲームへの影響度が高いコモンが他色に比べて多く、多少被っていても、方向性が異なれば漏れてきたカードで別軸の戦略を組み立てることができます。

取り消し道迷い

プレイヤーの多くが極力デッキに入れたくないと思っている《取り消し》《道迷い》でも僕は十分だと思っていて、前者はそれを円滑にプレイできるマナベース、後者はそれを活かすテンポ戦略が築けていれば良いです。

1stドラフトデッキ

日本選手権2018 1stドラフトデッキ:青赤

2ndドラフトデッキ

日本選手権2018 2ndドラフトデッキ:青黒

今回の本番でドラフトしたデッキもちょうどそんな感じになっていますね。2色ランドを2枚ピックしており、マナベースを安定させ《取り消し》を唱えやすくしています。土地が取れない場合は《予期》も良いです。《道迷い》は競合する高マナ域の枚数を抑えながら、「果敢」戦略に取り入れてバリューを出せるように努めています。

青を中心に補色を決定し、青白・青黒・青赤のテンポビートorコントロールを見据えていく戦略です。前述の通り白は混みやすいので、白をドラフトする際は強い部分だけを使えるように青をより濃くドラフトします。青に寄せれば《取り消し》をプレイするマナベースも整いやすいので一石二鳥ですね。グランプリ・ミネアポリス2018の2日目のドラフトで3-0したデッキがそのようになっています。

ミネアポリス3-0ドラフトデッキ

グランプリ・ミネアポリス2018 1stドラフトデッキ:青白

本戦結果

プロプレイヤークラブ・ゴールドにつき、1BYEスタートです。

スタンダード前半戦

ラウンド 対戦相手 結果
Round 1 BYE
Round 2 赤黒ミッドレンジ ××
Round 3 赤黒ミッドレンジ 〇〇
Round 4 グリクシスミッドレンジ 〇〇
Round 5 赤黒ミッドレンジ
(BIGs・加藤 健介さん)
〇〇

BYE明けで早速赤黒にストレート負けし、温泉にでも入って帰ろうかなと思っていたところ、その後急激に調子が良くなり3連勝。

1stドラフト

ラウンド 対戦相手 結果
Round 6 青緑
(BIGs・斉田 逸寛さん)
×〇〇
Round 7 白青
(Team Cygames・山本 賢太郎さん)
〇〇
Round 8 白黒
(BIG MAGICプロ・瀧村 和幸さん)
〇×〇

ドラフトテーブルには「できれば当たりたくないな」と思ったプレイヤーが3人いたのですが、しっかりフラグを回収。しかしデッキが強かった&サイドボードが潤沢だったこともあり勝ち抜けました。

特に瀧村さんとの最終戦は激戦で、後ろで見ていたHareruya Prosの熊谷さんに「ナイスゲームでした」と声を掛けられ、結果と合わせてとても嬉しかったですね。

2ndドラフト

ラウンド 対戦相手 結果
Round 9 青赤 〇〇
Round 10 青黒 〇〇
Round 11 赤黒 〇×〇

2ndドラフトのデッキはあまり良くないものでしたが、卓のカードが全体的に弱かったのでこれでも比較的良い方に分類されそうです。

回っていたコモン・アンコモンは弱かった一方で、どの相手も《工匠の達人、テゼレット》《厄介なドラゴン》と言った強力なレアを有していましたが、そこに《取り消し》がいい感じに効いてくれて3-0。

スタンダード後半戦

ラウンド 対戦相手 結果
Round 12 赤黒アグロ
(準優勝・難波 直也さん)
××
Round 13 赤黒アグロ
(小澤 毅さん)
〇〇

ここまでを10-1で切り抜けることができたので、2戦の内どちらかを勝てればトップ8と言う連続チャンスに突入。

赤黒には2回やれば1回勝てる感覚で、イメージ通りの結果となりトップ8へ。

決勝シングルエリミネーション

ラウンド 対戦相手 結果
準々決勝 赤黒アグロ
(BIGs・朴 高志さん)
×〇〇
準決勝 赤黒アグロ
(準優勝・難波 直也さん)
××
3位決定戦 青単アグロ
(行弘 賢さん)
××

しかしその感覚は決勝のシングルエリミネーションでもしっかりと当たってしまい、準決勝を敗退。3位決定戦で行弘さんにも負けて4位でした。

昨年度は要所を勝利し日本代表となることができましたが、その前の2016年はWMCQ東京予選を決勝戦で敗退し、2015年はWMCQ名古屋予選を準々決勝で敗れています。

毎年いいところまでは行くのですが、最後数戦はその日を勝ち抜いてきた真の猛者との勝負になり、なかなか勝たせてくれませんね。日本代表への道は本当に険しい。

今回負けた難波さんには1ゲームも取ることができませんでした。勝負強さを感じましたね。WMCでも是非その力を遺憾なく発揮してほしいです。応援しています。

最終的にスタンダードは9戦中7戦を赤黒と対戦し、4勝3敗。

前述の通り「マジでほんの少しだけ」勝ちました。赤黒は本当に強いデッキなので、その相手にこれだけやれたことからもデッキ自体はぼちぼちでしたね。

ただやはり《光袖会の収集者》を引いたゲームはとにかく劣勢になったので、もしこれをメインボードから取り除くアプローチを取ることができていれば、もっと違った結果になっていたかもしれません。

光袖会の収集者

《光袖会の収集者》と言えばコントロールデッキキラーのイメージが強いかと思いますが、青黒ミッドレンジは軽いクリーチャーをこれぐらいしかプレイしないので、《ゴブリンの鎖回し》される以外にもよく除去の的になり、ドロー効果を適用できたことはあまりありません。サイドボード後も相手が残している除去をよく食らいました。これが効果てき面なのはターボフォグや青単アグロといった極端にシェアが狭い相手だけです。

また、確かに「除去されなければ有利」かもしれませんが、「そもそも入れなければ相手の除去が腐り有利になる」という考え方もあります。《光袖会の収集者》は放置すると非常に危険なカードであることに間違いなく、《致命的な一押し》のような軽量除去は比較的多めに残される傾向があると感じていました。練習時もかなり高い確率で除去を受けています。

しかしそれは、もし《光袖会の収集者》を取り除くプランを取ることができていれば、かなり高い確率で手札に無駄牌を握らせたままゲームができたということになります。

リスト自体は有名ですから仮に1ゲーム目でプレイしなくてもデッキには入っていると予想するでしょうし、マナベースには余裕があるので《霊気拠点》を残せば偽装することは容易でしょう。

『ラヴニカのギルド』が発売されれば、『カラデシュ』『霊気紛争』『アモンケット』『破滅の刻』がローテーションによりスタンダード落ちします。現行スタンダードの青黒ミッドレンジとしてのノウハウが活きてくることはもう無いでしょうが、類似したシチュエーションで同じ着想が持てればこの先自身のマジックは更なる広がりを見せることでしょう。

短いキャリアで駆け抜けてきた分、僕には経験が不足しています。学びの一つ一つを脳裏に焼き付け、次に繋げていくのです。今回もまたいい経験でした。まだまだ強くなります。

終わりに -競技マジックを目指す方へ-

最後に、大会会場で公式インタビューを受けました。

僕のマジックにおける経歴が綴られたりしていますが、英雄譚第Ⅲ章にマジックを頑張る人たちに向けたメッセージを残しています。競技に注力していきたいと考えている方には是非一度ご覧になっていただきたいです。

記事にもありますが、僕は「続けていくこと」が最も重要だと考えています。モチベーションと、それを支えてくれる仲間を大切にし、目標に向かって歩み「続けていくこと」を大事にしてください。

それではまた。

原根

この記事内で掲載されたカード

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