Translated by Kazuki Watanabe
皆さん、ごきげんよう。今日はレガシーの「4Cローム」について話そうと思っている。マジック25周年記念プロツアーで、私はレガシーを担当した。私と、友人であるマルセリーノ・フリーマン/Marcelino Freemanとアンドレアス・ガンツ/Andreas Ganzでチームを組んだのだが、成績はあまり良くなかった。しかし、レガシーのメタゲームを考慮すれば、「4Cローム」を選択したことについては満足しているよ。
デッキリスト
では、リストを見てみよう。
このリストは、長い間、大きな変更が加えられることなく生き残っている。このデッキを使用して何度かLegacy Challengeで勝利を掴んでいるが、最初に成し遂げたのは1年ほど前のことだ。調整に勤しんでいた頃は、違うプレインズウォーカーを試したり、除去を変えてみたりしていたのだが、"老い木は曲がらぬ"という格言のとおり、大きく変化はしなかった。
もしこのデッキを使用したことがあるならば、最初の質問はおそらくこうだろう……"はどこだ?"、と。たしかにこのカードは素晴らしいが、今は好きではない。ストームデッキに対してのみ、有効だからだ。
ああ、たしかにとを封じることはできるが、「青白奇跡」にはとという組み合わせもある(不用意に攻撃を仕掛ければ、たやすくブロックされて死んでしまうだろう)。したがって、相手はを容易に処理してくるか、他の脅威を警戒してが無視されるかといった状況に陥りやすい。
「グリクシス・コントロール」との対戦ではとを封じることができるが、グリクシスも豊富な除去を要しているため容易に対処してくるだろう。
それにを封じずとも、ゲーム序盤にいずれかの脅威でを使わせて2対1交換ができるのであればそれで十分だ。
さて、このデッキの基本的な戦略は、墓地を活用するものだ。つまり、サイドボード後の2ゲーム目、3ゲーム目で相手が使用してくるであろう墓地対策に対して、優れたゲームプランを用意することこそ重要になる。や、のような一度墓地のカードを追放するようなカードを恐れる必要はない。その"一度"を乗り切ってしまえば、再び墓地を満たすまでに時間はかからないはずだ。しかし、やとなれば別問題になる。こちらにを対処する手段は用意されていない(私はが嫌いなのだ)。また、手慣れたプレイヤーならば、戦場に出た瞬間に多大な被害を与えられる状況になるまで、を手札に取っておくことだろう。つまるところ、我々には莫大なアドバンテージ源が必要であり、一度設置したら、それを全力でサポートしてあげればよいわけだ。
プロツアーでは、を2枚採用してみたのだが、このカードは様々なマッチアップで輝いてくれた。1ターン目に設置することもできるし、ゲームを制するまでに必要なサポートは最小限で良い。多くの人は、同様の理由でプレインズウォーカーをサイドボードに採用している。通例では、かだろうか。しかし、私はこのどちらの選択にも賛同できない。これらのカードを試した経験が十分ではない、というのもあるかもしれないが、遅すぎると思う。次の機会には、を1枚サイドボードに入れてみようと思っている。彼女が刻んでくれるクロックは極めて速いはずだ。
マッチアップについて
最近、とあるプレイヤーが話していたことなのだが、メタゲームにおけるデッキの立ち位置を論じる際は、相性が悪いマッチアップについてしっかり分析をしなければならない、と彼は言っていた。プロポイントを欲している立場なら、まさにそのとおりだ。環境のトップ3のデッキとのマッチアップに一切の希望がない、というのなら、そのデッキは何の成果ももたらしてくれないだろう。では、レガシーでもっとも人気のあるデッキを調べた上で、グループ分けしてみることにしよう。
デッキ
希望のないマッチアップから話していこうか。では、を使用するデッキから初めよう。この中には2種類のデッキが含まれる。「オムニテル」と「スニークショー」だ。しかし、その違いは大した問題ではない。相手がをプレイしたならば、君は敗北に向かっているのだ。
慣れているプレイヤーは、こちらが序盤から掛けられるプレッシャーがほとんどない、ということを知っている。そこで、相手は1ターンで勝負を決めようとしてくるだろう。もあるし、時間はいくらでもある。では、どうやってそれに勝つか? 不可能だ。こちらの、もしくはを持ってくるを前にクリーチャーを出してくる、という可能性もわずかにあるが、仮にそうなったとしても向こうは次のターンに準備を整える時間がある。君の勝率は10%、といったところだ。いずれにせよ、サイドボードを活用する以外に、まともなゲームをする方法は存在しない。
プロツアーでは、にとって天敵であるRUG系のデッキや、デス&タックス、そしてリアニメイトのようなより速いコンボデッキが多い、と予期していた。
その他のコンボデッキ
こういった他のコンボデッキの方が速く見えるかもしれないが、こちらの方が干渉できる場面が多い。より多くの呪文を使うし、墓地も利用するからね。こちらの対抗手段は、だ(「リアニメイト」ならX=1、「ストーム」ならX=0で良い)。とは一層効果的になる。この内の1つでも戦場に置くことができれば、勝利までの時間を十分に稼いでくれることもあるくらいだ。そして、積極的にマリガンすることを恐れてはいけない。
プロツアーで、Hareruya Latinのルーカス・エスペル・ベルサウドの「赤黒リアニメイト」と戦ったのだが、その3ゲーム目のことだ。後手の私はを探してダブルマリガンを選択した。しかし、残念ながら引くことができず、を含む普通の手札でキープした。これは、明らかな失敗だ。手札が4枚以下になってでも、を探すべきだった。私がをプレイするまでの時間で、ルーカスはすでにクリーチャーをリアニメイトしていたよ。
「ストーム」との対戦では、をサイドアウトすることも考えられるが、が与える2点のダメージよりもの餌を確保しておくことの方が重要だろう。
クリーチャー主体のデッキ
今回のプロツアーでは、「エルドラージ」、「デス&タックス」、そして「RUGデルバー」が、クリーチャーを主体とするデッキの中で人気が高かったようだ。
対「エルドラージ」の1ゲーム目は、がすべてだ。戦場に出して能力を起動できるようになれば、この1枚がゲームを決めてくれる。ただし、「エルドラージ」はメインデッキにを2枚採用していることが多いから、これは覚えておこう。
サイドボード後は、相手が墓地対策を用意してくるので少しだけ複雑になる。もし相手が墓地対策を引いていなかったら、大きなアドバンテージを得たことになるわけだ。相手がを置いてゲームを始めたならば、一番良いのは相手のマナベースを攻めることだろう。は相手のデッキの要に見えるかもしれないが、マナ自体を生み出すことはないし、伝説の土地だ。破壊するのは最後で良い。その後は、こちらの手札に応じて2つの作戦が考えられる。
相手にクリーチャーを展開させて、で一掃する(できる限り多くのクリーチャーを巻き込むために、3点程度のダメージなら我慢して相手により多くのクリーチャーを展開させよう。ライフはでやられない程度に残しておけば良い。しかし、適切に防衛をしないと、容易に10点以上のライフをが砕いてくるので気をつけよう)。もしくは、だ。とで盤面を一掃できれば、勝利する手段はどれでも構わない。
相手のクリーチャーを対処しながら戦場をコントロールして、最後のクリーチャーはで処理する。もし既に相手のマナベースが崩壊気味で、を利用したがまだ襲いかかってきていないならば、イニシアティブを握るのに十分なプレッシャーをがもたらしてくれるはずだ。
「デス&タックス」との対戦は非常に面白いもので、五分の戦いとなる。1ゲーム目は向こうがアグレッシブに、こちらはコントロールのように振る舞うことになるだろう。あらゆる干渉手段をそのまま活用できるので、サイドボード前のゲームはかなり恵まれたものと言える。ゲームの中身で迷うことはないだろうが、気をつけるべきこともいくつかある。以下にまとめておこう。
・は、こちらのとをリセットできる。
・はこちらの除去のほとんどを封じてくるが、こちらには、、そしてという対処手段がある。
・フェッチランドを1枚残して、いつでも起動できるようにしておくこと。やの対策だ。それと、悪夢のような対策にもね。こちらにはクリーチャーを対処する方法が山ほどあるため、の道をこじ開け「統治者」の冠を得ることができれば勝利は目前だ。
サイドボード後、相手はとあらゆるヘイトカードを活用してコントロールのように立ち回ってきて、アグロ要素は薄まるだろう。先述のとおり、墓地のアドバンテージを失ってしまったら、最良なのはプレインズウォーカーとだ。こちらの主たる目標は、それらのうち1つでも可及的速やかに盤面に据えて、勝利の流れに乗ること。はすべてサイドアウトしてしまおう。相手は、回避手段をいくつも持っているからね。
クリーチャーを主体とする3つのデッキの中で、「RUGデルバー」との対戦がもっとも簡単で相性が良い。もちろん、とという2種類の1マナ + カウンター呪文 + という厳しい動き出しもあるが、この流れでも勝利することは可能だろう。が十分なマナを確保する術となってくれる。
このマッチアップでは、が絶対的な存在だ。向こうの対抗手段は、、のみである(サイドボード後はもあるが、とがあるので、やを利用せずにプレイできていることもある)。そして、一度が解決されてしまえば、負けることはほとんど不可能と言って良い。
カウンターを1つ乗せたは、相手のデッキに入っているカードの半数を封じてくれる。も同様だが、1ターン目、もしくは2ターン目に設置することができたら勝利したようなものだ。
コントロールデッキ
プロツアーでもっとも人気があったのは「グリクシスコントロール」だったが、このマッチアップも良い。1ゲーム目はやはりだ。グリクシス側はメインデッキに墓地対策が一切存在せず、動き出しがかなり遅い。一度が動き出してしまえば、相手をカードの波で飲み込むことができる。1ゲーム目で問題となるカードは、2枚存在する - とだ。が動き出すには、時間がかかる。そして、向こうはこれら2枚を速やかに唱えながら、カウンター呪文で守ってくる。この状況はかなり厳しいが、相手は環境のベストデッキだ。容易に勝てるとは思わないように。
サイドボード後、相手はを数枚サイドインしてくるはずだ。したがって、墓地に依存するような初手を無闇に求めるべきではない。こちらは、、そしてプレインズウォーカーというオールスターが登場するわけだから、後手でも引き続き相性は良好で、先手でも同様であろう。
まとめ
結論として、このデッキの長所と短所をまとめておこう。
長所:
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このデッキは、Tier 1のデッキのいくつかに対して有利であり、対等なマッチアップも複数存在する。
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相手に対する干渉手段が豊富で、経験と技術を磨けば磨くほど見返りがある。自分も相手も、このデッキに対する事前知識がなければ、痛い目を見ることになるだろう。
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とがあるので、シルバーバレット戦略を採ることもできる。
短所:
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干渉手段が豊富なので、ゲームは自然と長くなる。休憩時間にフードコートで何かを買う、といった時間は確保できないので、食料を調達しておこう。地元の大きな大会に何回か参加し、友人と8試合ほどこなして、MOのリーグに数回参加すれば、このデッキを使うのがどれほど大変なのか分かるはずだ。これは非常に重要な項目で、こういった干渉手段が豊富なデッキを競技レベルの大会で使いこなすために一番必要なものは"冷静でいること"なんだ。
- このデッキの特徴として、数枚の極めて珍しいカードを採用しているという点が挙げられる。実際に紙のカードでデッキを組むのはかなり難しいだろう。私の場合も、見つけられなかったカードは何人かに聞いて、ようやく手に入れることができた。
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レガシーは、絶え間なく変化するフォーマットだ。何らかのデッキが支配的になると、古い構築が不死鳥のように灰の中から蘇ってくる。私は「4Cローム」のようなデッキを懐に忍ばせておいて、しかるべき時期が訪れるまで隠し持っておくことが好きなのだ。良い結果を残す力が、このデッキにはあるからね。
この記事を楽しんでくれたことと、何らかの発見があったことを祈っているよ。
ここまで読んでくれありがとう。では、オンラインで会おう。
ドミトリー・ブタコフ
Dmitriy Butakov
ロシアのプレイヤー。Magic Onlineを主戦場としており、オンラインプレイヤーの中で最強を決める大会である2012 Magic Online Championshipで優勝、翌年の2013 Magic Online Championshipでもトップ4に入賞して注目を浴びる。
2018年には2017 Magic Online Championshipで2度目の優勝を果たし、名実ともにMagic Online上で最強のプレイヤーとして堂々たる実績を残すと同時に、優勝の特典でプラチナレベル・プロとなる。こうした実績が認められ、2018年3月にHareruya Prosへと加入した。
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