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相手のデッキの構成を推測しよう

2018/07/10 00:00 

    • Matti Kuisma
    • コラム

Translated by Yoshihiko Ikawa

原文はこちら
(掲載日 2018/07/05)

はじめに

Magic Onlineで『破滅の刻』リミテッドをしていたときのことだ。サイドボード後の試合で対戦相手の《川ヤツガシラ》《苦しめる一射》で除去したところ、対戦相手がひどく憤慨してチャットを飛ばしてきた。

苦しめる一射川ヤツガシラ

彼が言うには、彼のデッキには飛行クリーチャーがその《川ヤツガシラ》1枚しか入っていないので、《垂直落下》のような飛行クリーチャーにしか当たらないカードをサイドインすべきではない、ということらしい。ここで問題となるのは、僕にはそれを知る術がなかった、ということだ。

垂直落下

《垂直落下》のようなカードをサイドインするか否かを決断する際、考慮しなければいけない要素が複数ある。対象となるであろうクリーチャーはどれぐらい重要なのか?サイドアウトするカードはどれぐらい良いカードなのか?対戦相手が対象となるクリーチャーを引いていなかったとき、そのカードを引いてしまう(手札で腐る)ことがどれだけ損害を与えるか?マナカーブはどうなる?そしてもちろんこれも考えるはずだ。一体どれぐらい対象となるクリーチャーが入っているだろうか?

1ゲーム目が終わったあと、最低何枚入っているかを知ることができるだろうが、正確な枚数を知ることは絶対にできない。見た枚数が多ければ多いほど、君の推測は正確になるだろう。ただし、もし1ゲーム目で相手のデッキをすべて見ることができたとしても、サイドボード後の枚数は変わっているかもしれない。しかし、あまり情報が得られていないことも時々あり、その際にできることは「限られた情報を基に、相手のデッキを推測すること」だけだ。

川ヤツガシラ

《川ヤツガシラ》のケースで言えば、多くの要素が《苦しめる一射》をサイドインすることを正当化してくれた。1ゲーム目で見た1枚の対象(=《川ヤツガシラ》)が、非常に優れたクリーチャーだったし、僕のデッキは飛行にあまり強くなかった。そしてサイドアウトできる平凡なカードもあった。ゲーム展開は遅くなりそうだったので、いつか対象が出てくるだろうと予想した。また青いデッキなので《川ヤツガシラ》以外にも飛行クリーチャーがいるだろうとも考えたんだ。

対戦相手のデッキの構成を推測しよう

いつだって、見たカードだけでなく、相手のデッキ全体を推測してサイドボーディングを行うべきだ。

次の例を見ていこう。あなたは『ドミナリア』シールドをプレイしていて、《壊れた絆》をメインボードに入れている。

壊れた絆

1ゲーム目は非常に長いゲームだったが、《壊れた絆》の対象はたった1枚しか見ず、《馬上槍》のようなものだった。さて、あなたは《壊れた絆》をサイドアウトすべきでだろうか?もし見たすべてのカードから、対象となるカードの平均枚数をデッキの密度で考えるのであれば、答えはイエスだろう。だが、この決断に影響を与えるべき他の要素があるのだ。

『ドミナリア』シールドプールの大多数はアーティファクトやエンチャントを複数枚プレイすることになるし、そのうちの多くは《ボーラスの手中》《先祖の刃》のように非常に強力なので、メインボードでも《壊れた絆》《神聖の発動》がプレイアブルである。なので、今回のケースでは、「相手のデッキには十分な数のエンチャント/アーティファクトが入っているが、たまたまそのうちの1枚しか引かなかった」もしくは「相手のデッキには1-2枚しか《壊れた絆》の対象が入っていない」のどちらである可能性が高いだろうか?

ボーラスの手中先祖の刃

正確な確率は僕にも分からないし、「もし1枚も対象を見ていないとしても《壊れた絆》を常にサイドアウトしないようにすべきだ」などと言うつもりはない。僕が言いたいのは、「相手が珍しいドローだったのか」それとも「珍しいデッキだったのか」をよく考えるべきだ、ということだ。

逆に、対戦相手が「あなたが持っているだろう」と推測するカードにより、アドバンテージを得ることができる。なぜならもしあなたがそのカードを持っていなかったとしても、相手はあなたがそのカードを持っている可能性を考慮しないといけないからだ。

レオ・ラオネン/Leo Lahonenと一緒に、僕たちはグランプリ・バーミンガム2018(スタンダード)でクリーチャーが1枚も入っていない青白コントロールをプレイした。1ゲーム目を《ドミナリアの英雄、テフェリー》でロックし、ほぼライブリーの全てを見せて勝利した後ですら、対戦相手の大部分はサイド後も《黎明をもたらす者ライラ》《奔流の機械巨人》をケアするために《無許可の分解》《本質の散乱》といったカードをサイドアウトせずに残していた。すなわち、サイドボード後ですら完全なる死に札をデッキに入れていたのだ。

無許可の分解本質の散乱

そして、サイドボード後に《無許可の分解》のようなカードを残すことは正しいと僕は思う。僕自身もグランプリ・コペンハーゲン18で赤黒を手にとったときは、同じように《無許可の分解》を青白コントロール相手に残したもんだ。

これに似た状況は、相手が「これは残しているはずだ」と推測するであろうカードをサイドアウトすることによって作り出すこともできる。

血染めの月

《血染めの月》は、こういった種類のカードとしては最高の例といえるだろう。対戦相手は、あなたのデッキが《血染めの月》デッキであると一度認識すると、2色土地(ギルドランド/デュアルランド)の代わりに基本地形をフェッチするようになるし、基本地形をフェッチすることにリスクがあるときですら、基本地形を持ってくることがある。特に後攻の場合、対戦相手には備える時間があり、また《血染めの月》をあなたが使っているという情報を既に与えているときは、《血染めの月》をサイドアウトすることもあるだろう。

特定のカードチョイスに注意を払おう

ポイントは、対戦相手の正確なデッキリストを知らないときであっても、対戦相手が実際に使ったカードよりも幅広いカードに備えなければならないということだ。これは友人とテストプレイするよりも、Magic Onlineでテストプレイを行う利点の1つでもある。なぜなら友人とテストプレイを数回やると、そのアーキタイプ全体に対してではなく、その対戦相手のデッキリストに対するプレイの仕方やプレイスタイル、サイドボーディング戦略を学んでしまうからだ。

Magic Onlineをプレイしているときは、対戦相手が十人十色のデッキリストとサイドボーディングプランで戦ってくるし、トーナメントに参加しているときだって対戦している相手のデッキがどんなバージョンかを知ることはできない。予想していなかったカードによって敗北することもあるだろう。

デッキリストを知らないデッキと対戦するときは、追加の情報を公開してくれる可能性があるので、特定のカードチョイスに注意を払うことが重要なんだ。

明日からの引き寄せ奔流の機械巨人天才の片鱗

1つ分かりやすい例を挙げてみよう。スタンダードで対戦相手の青白コントロールが《明日からの引き寄せ》をプレイしてきたら、多分サイドボード後に《奔流の機械巨人》をケアする必要はないだろう。だが、もし《天才の片鱗》をプレイしてきたなら、間違いなく《奔流の機械巨人》が出てくると思ったほうがいい。

壊れた絆アヴナントの罠師

《壊れた絆》のケースに話を戻すと、もし対戦相手が《アヴナントの罠師》のようなカードをプレイしているなら、《壊れた絆》の対象が相手のデッキに十分な数だけ入っている可能性は上がる。なぜかというと、他のカードたちではなく《アヴナントの罠師》をプレイすることを対戦相手が選択したからだ。採用した理由は、単に他の選択肢よりも3マナ3/2バニラが優秀だったかもしれないが、《アヴナントの罠師》を十分に誘発できるだけのカードがデッキに入っているという理由かもしれない。どちらの可能性が高いだろうか?

スタンダードでの具体例を見てみよう

今のスタンダードにおいて、《ゴブリンの鎖回し》デッキはとてもアグレッシブなものからミッドレンジタイプまで、そしてときにはコントロールにすら変化することができる。対戦相手のデッキがどのタイプか見極めるのはサイドボーディングにおいて非常に重要となるが、それはまたとても難しい場合がある。直近のプロツアーでは、リード・デューク/Reid Dukeとオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldが75枚同じデッキをプレイしたが、公式のカバレージページで片方は「赤黒アグロ」に分類され、もう一方は「赤黒ミッドレンジ」に分類されてしまったほどだ。

(簡易訳) 「青白コントロール」と「青白テフェリー」だったり、「赤黒アグロ」と「赤黒ミッドレンジ」だったりと、Wizardsのデッキの命名規則に困惑してるよ。さらにはリードとオーウェンは75枚同じデッキを使ったのに、別々の名前がつけられてるぞ。

さて、同じプロツアートップ8のデッキリストの中からオーウェンのデッキと瀧村 和幸のリストを比べてみると、ある意味では彼らは同じアーキタイプであると言える。少なくとも、彼らは多くのカードが共通している。だが、彼らのデッキに対するサイドボーディングは、全く違うものであるべきで、だからこそ相手のデッキがどのタイプの「赤黒」なのか知るために、相手の選択しているカードによく注意を払うべきである。

オーウェンのデッキは考えうる中で最も攻撃的なリストの1つであり、軽めのマナカーブが3枚の《熱烈の神ハゾレト》を支えている。

一方、瀧村のデッキは僕がこれまで見た中で最も遅いタイプの赤黒だ。1マナ域に《ボーマットの急使》《損魂魔道士》を採用せず、代わりに《マグマのしぶき》を採用してさえいるのだ。

プロツアー『ドミナリア』の第16回戦、瀧村 vs. ケヴィン・ジョーンズ/Kevin Jonesの試合が、相手の赤黒デッキがどれぐらい攻撃的なのか防御的なのかを推察することの重要性を示す素晴らしい例として挙げられる。

1ゲーム目で瀧村が《ヴラスカの侮辱》プレイしたのを見て、ジョーンズは瀧村のリストが通常のものよりも遅いチューンであることに気付くべきだった。1枚の《ヴラスカの侮辱》が、以下のように複数の情報を教えてくれたのだ。

ヴラスカの侮辱

まず1つ目は、《ゴブリンの鎖回し》《ヴラスカの侮辱》の両方を安定してプレイするためには、一般的なリストよりも2色地形を多く採用しなければならないという点だ。すなわち《燃え殻の痩せ地》が複数枚採用されており、そのタップインの土地が複数枚採用されている関係でマナカーブ通り、攻撃的に動くことは難しい。タップイン土地を多く採用していることと相性が良くないので、最低でも一般的なリストよりも1マナ域のクリーチャーは少ないだろう。

2つ目は、《再燃するフェニックス》《ウルザの後継、カーン》《反逆の先導者、チャンドラ》といった素晴らしいプロアクティブなカードたちの代わりに、4マナ域の受動的なカードとして《ヴラスカの侮辱》が採用されているという点だ。これは瀧村が単に攻撃的にプレイするのではなく、よりロングゲームを見据えて、相手の脅威に対応することに重点を置いていることを表している。

スカラベの神

3つ目は、青黒ミッドレンジにとって、《ヴラスカの侮辱》の存在が「除去して《スカラベの神》出して勝ち!」というゲームプランが信頼できないということを意味しているという点だ。大抵の赤黒のリストには《スカラベの神》へのクリーンな解答が採用されていないので上記のプランは有効な戦略なのだが、ひとたび《ヴラスカの侮辱》を目にしたなら、より長期戦に強い形に変更したくなるだろう。また黒マナ源が多めに採用されている場合、赤黒は長期戦において素晴らしい活躍をする《アルゲールの断血》も採用している可能性が非常に高い。したがって、青黒側も長期向けのプランに移行すべきだ。

動画を見てもらえばわかるが、2ゲーム目と3ゲーム目はカードアドバンテージによる物量差で瀧村がジョーンズを打ち破った。ジョーンズの手札には《悪意の騎士》《ヤヘンニの巧技》そして複数枚の《致命的な一押し》といった、より攻撃的な赤黒デッキに対して素晴らしいカードがあったが、瀧村はそれらのカードを意に介することはなかった。なぜなら、彼は複数枚のプレインズウォーカー、複数枚の《ヴラスカの侮辱》、そして《アルゲールの断血》によって、より重い構成にシフトしていたからだ。彼は《魔術遠眼鏡》までもサイドインしていたのだ!

ヤヘンニの巧技

《ヴラスカの侮辱》を見ただけですべてを調整することは難しいだろうし、ときには深読みしすぎであることもある。だが2ゲーム目を経て、瀧村のゲームプランが明白になったので、その時点でジョーンズは《ヤヘンニの巧技》を抜き、もっと長期戦で活躍するカードをサイドインすべきだった。

これが、一般的な「サイドボーディングガイド」の有用性がかなり限られている理由の1つである。もしそのデッキを使い始めたばかりで、特にコツも掴んでいないようならば、適当にサイドボーディングするよりはプロプレイヤーたちのサイドボーディングガイドをコピーしたほうが良いだろう。だが、そのサイドボーディングガイドに厳密に従わなければいけない訳ではない。例えば、スタンダードの赤黒ミッドレンジのケースでいうと、特に先攻か後攻かもサイドボーディングに影響してくるので、どのカードを入れてどのカードを抜くか、すべての可能性を網羅することは不可能だからだ。

まとめ

《壊れた絆》のケースと《ヴラスカの侮辱》のケースは、それぞれ逆のケースといえる。前者は「見たカードを基に考えすぎず、デッキを変えないこと」についてであり、後者は「見たカードを基に考えて、しっかり変更すべきだったこと」についてである。自分が受け取ったシグナルがどちらに当てはまるか、認識することはこのゲームにおいてもっとも難しいことの1つである。今回の記事で、相手のデッキ内容やサイドボーディングを分析するための、より良い考え方が身についたなら幸いだ。

また次の記事で会おう。

マッティ

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