『マジックの華は、デッキリストだ』
これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。
であればデッキリストを見るという行為は。
単なる"知識の探求"を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。
この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。
気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。
さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。
スタンダード: 「ローグ」
- Eric Fairchild
- 「ローグ」
- US Nationals 2018
- (15位)
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先週末開催されたアメリカ選手権2018でトップ16に入賞していたこのデッキ。まず目を引くのは「余波」カードの数々! こんなにもたくさんの「余波」が採用されているのには理由があります――それが《選別ワーム》です。
あまり構築では見慣れないクリーチャーですが、その能力は「戦場に出たときライフを回復する」といったもの。ただし回復量は固定ではなく、占術3を行った後ライブラリートップを公開し、公開されたカードの点数で見たマナ・コストを参照します。これが分割カードを大量に採用している理由ですね。《暗記+記憶》がめくれたら10点ゲイン! 戦場に7/7トランプルが残ることを考えると破格と言えるでしょう。
また、デッキの根幹を成す戦略はマナランプです。4枚採用された《開拓+精神》はランプデッキの基本戦略《選別ワーム》との相性も良く、《破滅の刻》や《驚天+動地》はマナが伸びるまで身を守ることができます。盤面を捌いて《選別ワーム》でフィニッシュするか、あるいはコントロールデッキが相手ならば《イプヌの細流》を延々と起動し続けることで勝利できそうです。
『基本セット2019』には回復量が固定でアドバンテージも稼げる《ペラッカのワーム》も収録されるので、もしもこのデッキが次環境まで生き残るとしても《選別ワーム》と「余波」呪文たちは解雇されてしまうかもしれませんが……それにしても、この環境末期の中で新たなデッキが生まれるとは! 現在のカードプールに眠っている可能性に驚きです。
モダン: 「硬化した鱗」
- Johann Fink
- 「硬化した鱗」
- Grand Prix Barcelona 2018
- (9位)
2 《地平線の梢》
1 《ペンデルヘイヴン》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《墨蛾の生息地》
2 《ちらつき蛾の生息地》
-土地 (20)- 4 《搭載歩行機械》
4 《歩行バリスタ》
4 《電結の働き手》
2 《演習用模型》
4 《電結の荒廃者》
4 《鋼の監視者》
-クリーチャー (22)-
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「親和」デッキといえば往々にして1~2色の色が足されるものです。赤なら《感電破》や《爆片破》、青なら《物読み》や《エーテリウムの達人》などですね。その両方の色が足されている場合もありますが――緑が足された場合はどうなるのでしょう?
鍵を握るのは《硬化した鱗》です。「《硬化した鱗》入りの親和」という発想は以前からありましたが、大舞台での活躍はあまり見られず、"ごく稀に見かけるファンデッキ"の域を出ないものでした。しかし、今回ご紹介するデッキはなんと先週開催されたグランプリ・バルセロナ2018で上位入賞を果たしています。
《硬化した鱗》が入ったことによって従来の親和よりも「接合」能力によるシナジーが強化され、爆発力が増しているのが特徴です。このリストでは《ゲスの玉座》や追加の《電結の働き手》として《演習用模型》まで採用されており、とにかく「+1/+1カウンター」を溜めやすくなっています。逆に、定番である《頭蓋囲い》が入っていないのも特徴的ですね。
他にもアーティファクトを探すのに役立つ《古きものの活性》や追加のサクリ台として《進化の飛躍》も採用されており、従来の親和とは一線を画す非常にトリッキーなデッキリストとなっています。親和のパーツさえ持っていれば比較的容易に組めそうなところも魅力的。ちなみに、「鱗親和」は過去にHareruya Prosの井川 良彦が生放送で回していたこともあります。《ゲスの玉座》で対戦相手の《薬瓶》のカウンターを増やしてスカらせたり、10/10の《墨蛾》で《オーメンダール》をチャンプブロックさせたりと見どころ満載なので、ぜひ見てみてくださいね。
レガシー: 「複合コンボ」
- Mizukami Atsushi
- 「複合コンボ」
- 札幌店平日レガシー20時の部
- (3-0)
1 《平地》
1 《沼》
3 《Tundra》
2 《Underground Sea》
1 《Scrubland》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《湿地の干潟》
-土地 (19)- 3 《瞬唱の魔道士》
3 《石鍛冶の神秘家》
3 《グリセルブランド》
-クリーチャー (9)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《思考囲い》
1 《陰謀団式療法》
1 《再活性》
3 《実物提示教育》
2 《直観》
2 《未練ある魂》
4 《意志の力》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (32)-
2 《呪文貫き》
2 《外科的摘出》
1 《封じ込める僧侶》
1 《グルマグのアンコウ》
1 《解呪》
1 《議会の採決》
1 《毒の濁流》
1 《至高の評決》
1 《真髄の針》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
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「こ、これは! デッキリストから深いカオスが伝わってくる……! そうだ、己のデッキリストが己の魂を表現するものだと教えてくれたのは晴れる屋札幌店だ……!」(CV: 関 〇一)
さて、マッチポンプ・ストンピィといい1T《中隊》ストンピィといい、晴れる屋札幌店には珍しいデッキを使う人が多いようです。今回はそんな札幌店から、エスパー石鍛冶と《実物提示教育》を複合した不思議なデッキをご紹介します。なぜこの組み合わせなのか? 少し考えてみたのですが、よく分かりませんでした。しかもディスカード手段がセルフハンデスと《直観》しかないのに、《再活性》というサブプランも搭載されています。
なんとも奇妙な複合デッキですが、何はともあれ勝ち手段が多いのはいいことです。コンボ要素が入ったことによって《直観》のサーチのバリエーションも多く、対戦相手に難しい選択を強いることができますからね。普通に《未練ある魂》を墓地に落とすのもいいですが、《瞬唱の魔道士》2枚と《実物提示教育》のような組み合わせも考えられます。
《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》が禁止され、レガシー環境はこれから激動を迎えることでしょう。ともすれば、新たなデッキが生まれる可能性もあります。レガシーの新時代を開拓する鍵は考えもしないようなデッキコンセプトの融合――もとい、晴れる屋札幌店にあるのかもしれませんね。
いかがだったでしょうか。
ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。
読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。
また来週!
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