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プロツアーを振り返る ~「赤黒ミッドレンジ」を手にするまで~

2018/06/08 00:00 

    • 原根 健太
    • Hareruya Pros Blog

先日行われたプロツアー『ドミナリア』に参加しました。今回はその振り返りをサラッと行いたいと思います。

では早速。

準備

今回もこれまで同様チーム武蔵の面々と共に調整を行いました。先日のプロツアー『ドミナリア』地域予選でめでたく権利獲得に至った高尾 翔太さんも調整メンバーに加わっています。この調整グループはアグロ思考の人間が不足しがちなので、高尾さんの存在は非常に大きいと思っています。

高尾 翔太

高尾 翔太

さて、今回のプロツアーは新セットの発売から5週間後に実施され、さらにその過程では2つのグランプリ(グランプリ・バーミンガム2018グランプリ・トロント2018)が開催、Magic Online ChampionShip予選もスタンダードで開催されるなど、情報が出尽くした状態で戦うことになっています。

調整もこれらのイベントで好成績を収めたデッキを試していく方向からスタートし、それぞれのデッキをぶつけ合いながらデッキのポテンシャルや相性を測っていく作業となりました。

調整グループとしての細かな様相は例の如く『市川ユウキの「プロツアー参戦記」』にて掲載されるはずなので、そちらをご覧ください。

調整の結果、最終的に僕が選択することになったのは赤黒ミッドレンジ。環境に存在するデッキの中でも本命中の本命と言えるものです。『ドミナリア』発売後初めてのスタンダードグランプリで優勝という最高の成績を収めたこのデッキはグランプリ・バーミンガム2018時点で非常に完成度が高く、赤黒マニアの高尾さんもリストを見たときから感嘆の声を上げていました。

それからしばらくの間このデッキはスパーリングのメインデッキに設定されたのですが、初めから最後までその力を遺憾なく振るっていました。持ち込むデッキはこれに対し良くて五分、著しい有利は得られず、それどころか微々たるアドバンテージさえ発見することができなかったのです。

赤黒ミッドレンジというデッキは3本の柱から成り立っています。

屑鉄場のたかり屋キランの真意号

1つ目は《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》による最序盤のビートダウン戦略です。両者は環境屈指のビートダウン性能を持ち、コントロールデッキに強い耐性を持ちます。《屑鉄場のたかり屋》の蘇生能力は青黒系に極めて強く、《キランの真意号》の警戒は《封じ込め》を持つ青白系に対し非常に効果的です。

ゴブリンの鎖回し再燃するフェニックス

2つ目は《ゴブリンの鎖回し》《再燃するフェニックス》によるビートダウン耐性です。上記に挙げた《キラン》《たかり屋》を用いる戦略は対コントロールに対してすこぶる強い分、ビートダウンへのガードが下がってしまう欠点がありました。

しかしタフネス1を一掃し、先制攻撃によりタフネス3以下の地上生物の存在を否定してしまう《ゴブリンの鎖回し》と、不死能力により対空方面にも睨みを利かせる《再燃するフェニックス》は、並大抵のビートダウンデッキでは突破することができません。

反逆の先導者、チャンドラウルザの後継、カーン

3つ目は《反逆の先導者、チャンドラ》《ウルザの後継、カーン》によるプレインズウォーカー戦略です。クリーチャーによる攻め一辺倒のデッキというわけではなく、2種のプレインズウォーカーを交えた多角的な戦略を有しています。

赤黒というカラーリングの性質上除去呪文は豊富に用意されており、それらは攻勢時のサポートであると同時に、守勢時にはプレインズウォーカーを守るうってつけの手段となるのです。

3本の柱は全てが異なる性質を持っており、対策は非常に困難です。そのくせ全ての要素がゲームを決定付けるインパクトを持っているものですから、対処は容易ではありませんでした。あれやこれやとテストを行いましたが、終ぞ攻略には至らず。

チーム武蔵の面々は市川ユウキさんが練り上げたエスパー・コントロールで臨むことを決めたようでしたが、僕はこの方針に賛同することができませんでした。

なぜならメインターゲットとなる赤黒デッキに有利がつかないどころか、僕の主観では不利にさえ思えたからです。

赤黒には僕が今回使ったようなミッドレンジタイプの他、《ボーマットの急使》を使ったアグロタイプもあり、サイドボード後の変化も合わせて様々な対応を強いられます。多角的な攻めを行うデッキに対しては、対応する側が不利なのがマジックの通説。どのようなプランを取ってくるかは相手側の構築・判断に依存してしまいます。

中間的なプランで安定した勝率を出すことができれば良かったのですが、最終日の調整でそれが不可能だとわかり、赤黒を使う側に回る決意をしました。

ボーマットの急使

ごくごく一般的なリストですが、変わった点としてはサイドボードに《ボーマットの急使》を4枚採用しました。コントロールデッキとテストを行った際、赤黒側から追加されるカードが《大災厄》《ウルザの後継、カーン》《最古再誕》《炎鎖のアングラス》と重いカードばかりで、序盤にしっかりとしたプレッシャーをかけられていないと相手のカウンターが間に合ってしまう展開が多いことに気がつきました。《屑鉄場のたかり屋》を引けていない展開ではプレッシャーが極端に低く、余裕を持って捌かれてしまうため、最序盤の脅威を追加しています。

《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》との選択で迷いましたが、後手の1ターン目でカウンターされずに通せることを重視してボーマットを選んでいます。1ゲーム目を《マグマのしぶき》《削剥》のような不要牌を重ね引いて落としてしまう展開はどうしても発生してしまいますから、マッチ中1度は訪れる後手のゲームを安定して進めたい意図があります。

本番

まずドラフトラウンドでは以下2つのデッキをプレイし、それぞれ2-1と1-1-1、合わせて3-2-1でした。

1stドラフトデッキ
ラウンド 対戦相手 結果
R1 赤緑 〇〇
R2 緑タッチ白黒 〇××
R3 赤緑 〇×〇
2ndドラフトデッキ
ラウンド 対戦相手 結果
Round 9 白緑 ×〇〇
Round 10 青白
(藤村 和晃)
×〇△
Round 11 黒緑
(ペトル・ソフーレク)
××

1stドラフトは1パック目で確保できた2枚の《カーンの経時隔離》をフィーチャーしたレジェンドデッキをプレイ。爆発力のあるおもしろいデッキでしたが除去が少ないのが弱点で、緑の大型生物のビートダウンに屈し1マッチを落としてしまいました。

カーンの経時隔離

2ndドラフトは上家にペトル・ソフーレクさん、下家に行弘 賢さんという厳しいポジションで辛めのデッキとなっています。2勝できそうだったのですが、圧倒的ウィンコンディション(相手手札なし、戦場に土地のみ、ライフ1)で引き分けてしまい、もったいない勝ち逃しでした。

状況的には4-2し得たということで、過去のPTドラフトの中では最も上手く行ったドラフト回でした。練習段階での勝率はぼちぼちといったところで、練習の比重もそれほど高くなかったことから、デッキの全体像を見据えたピックや対戦中のコンバットなど、基礎的な技術が向上しつつあると思われます。たまたま上手く行っただけの可能性もあるので、今後真価が問われますね。

そして構築ラウンドの結果は以下の通り。

ラウンド 対戦相手 結果
Round 4 赤単アグロ
(オリヴァー・ポラック=ロットマン)
〇〇
Round 5 赤黒ミッドレンジ
(コーリー・バークハート)
〇〇
Round 6 白黒ミッドレンジ 〇××
Round 7 赤単アグロ 〇×〇
Round 8 黒緑《巻きつき蛇》 ×〇〇
ラウンド 対戦相手 結果
Round 12 青黒コントロール
(ジェレミー・デザーニ)
〇×〇
Round 13 赤黒ミッドレンジ
(アンドレア・メングッチ)
××
Round 14 青黒王神 〇〇
Round 15 赤黒アグロ
(浦瀬 亮佑)
〇×〇
Round 16 赤黒ミッドレンジ ××

7-3。ドラフトの成績と合わせて10-5-1となり、プロポイント7点と$1500を獲得。次回プロツアーの参加点を合わせると34点が確定しているため、次シーズンのゴールドレベルまではあと1点に迫りました。

比較的好成績ですが、プロポイントの関係上もう1勝がほしかったので最後の敗戦は悔やまれます。とは言え赤黒のミラーマッチはどこまで行っても運の比重が高く、2勝2敗はある種期待値通り、負け越さなかっただけマシと言えます。調整段階でこのマッチアップの勝率を向上させる要素を見つけられていなかったわけですから、妥当な結果でしょう。これ以上は望み過ぎというものです。

まとめ

今回は試行錯誤の末、環境トップデッキを使うという苦肉の策を取ることになりました。日本最高峰の調整チームに身を置かせてもらっている以上、何かしらのソリューションを持って本番に臨みたかったところですが、今回はいかんせんトップに君臨するデッキが強過ぎました。

それを裏付けるかの如くトップ8には28枚の《ゴブリンの鎖回し》と102枚の《山》。そういう面では正しい選択が行えたと言えるかもしれませんが、もう一つ上のステージもあったかなという印象。具体的に言えばミラーマッチの勝率を改善できる一手ですが、それは今もなお分かっていません。

強いて挙げるとするならば《木端+微塵》でしょうか。

木端+微塵

サイド後はどちらのプレイヤーも除去とプレインズウォーカーを大量に投入し合い、消耗戦が繰り広げられます。その過程で《屑鉄場のたかり屋》《ゴブリンの鎖回し》《栄光をもたらすもの》によるダメージが少しずつ積み上げられていくわけですが、《木端+微塵》はそうして累積したダメージを勝利条件に繋げてくれる1枚になります。

同じX火力でも、ゲーム終盤でしか機能しない《霰炎の責め苦》のようなカードとは異なり、再序盤からでもリソース換算が可能、その上で後半の決定打となる《木端+微塵》はこのマッチアップのキーカードの可能性があります。

霰炎の責め苦

現在の赤黒デッキはライフゲインおよび墓地追放手段を持たないため、「わかってはいるが回避不可能」な詰みの状況を作り出せることでしょう。

プロツアーが終わった今もなお、今月末開催のグランプリ・シンガポール2018に向けてスタンダードをプレイしている現在ですが、他のデッキの検証と共に、この《木端+微塵》をフィーチャーした赤黒デッキの調整を続けるつもりです。

ゴブリンの鎖回し

これほどまでにプロツアーの上位が特定のアーキタイプで埋め尽くされる状況は大変珍しいことですが、それだけ今の赤が強力であるということを物語っています。《ゴブリンの鎖回し》はカードの性質もあって「支配的」という言葉がピッタリですね。

『基本セット2019』がリリースしカードプールが拡張されればまた環境も変化することでしょうが、果たしてそれまでに現在の状況を塗り替える一手は存在するのでしょうか? 今後のトーナメント結果に注目したいですね。

それではまた次回。

この記事内で掲載されたカード

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