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モダンに訪れた「アグロの時代」

2018/05/22 00:00 

    • Pierre Dagen
    • Hareruya Pros Blog

Translated by Daijiro Ueno

はじめに

やあ、読者のみんな。

またこの時期がやってきたね。新セットがリリースされ、リミテッド環境はとても魅力的だ。先週末にお披露目となったスタンダードはデッキビルダーたちにとっての楽園で、プロツアーがすぐそこに迫っている……。

だが、俺がプレイするのはモダンだけだ。

理由なんてないさ。ただ、貴重な時間は南アフリカで友達と過ごすために費やしたから、スタンダードに没頭する暇はなかったんだ。だから、スタンダードの熱気について長々と話すよりも、今回はモダンのことだけについて書こうと決めたんだ。

モダンという”典型的な”非アグレッシブフォーマット

歴史上、モダンは一度もアグレッシブなフォーマットであったことはない。

炎の儀式猛火の群れ

モダンはプロツアー・フィラデルフィア2011で初めて正式採用された。《炎の儀式》《猛火の群れ》のようなバカげたカードが禁止じゃなかったころだ。そのときのモダンはコンボだらけで、皆がやることといったらどの試合でも壊れたことをしかけるのみという感じだった。正気じゃないぐらい4ターンキルの確率が高い「エルフ」と当たった時のことを覚えているが、毎回2、3ターン目に敗れ去るほかなかった(そのあと「《欠片の双子》コンボ」に当たるという具合だ)。つまるところ、当時のモダンは半分以上がコンボで占められていたんだ。

欠片の双子出産の殻

その”暗黒時代”のあと、大量の禁止指定が始まった。だがそれでもコンボは大人気だったんだ。長いことモダンは《欠片の双子》コンボ」対「《出産の殻》が主流で、他にはより劣ったデッキしかないという感じだった。「アミュレット・ブルーム」にはすこしチャンスがあったかもしれないけどね。

《出産の殻》はとうとう禁止され (俺にとってすごく悲しいことだったが、当然だったと思う)、ミッドレンジが活躍する時代を迎えた。例えばプロツアー『運命再編』で最も使用された「アブザン」《欠片の双子》に対して対抗できる強力なミッドレンジとして脚光を集めたデッキだった。しかしそれでも、《欠片の双子》は強すぎると判断され、同じく禁止となった。ほんの数か月の“エルドラージの冬”という寒い無色の時代に突入することになるわけだが……。しかしこのとき、歴史上唯一アグロデッキがモダンの食物連鎖の頂点に君臨していたのは間違いない。

時が経過し、プロツアー『イクサランの相克』が訪れると、今までデザインされた中で最も悠長なデッキ、「ランタンコントロール」が優勝を飾ることとなった。そして立て続けに、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社は《精神を刻む者、ジェイス》《血編み髪のエルフ》を解禁するという措置をとった。どちらも4マナと重く、アグロには完全に向かい風だったんだ。

精神を刻む者、ジェイス血編み髪のエルフ

それにもかかわらず、今のモダンは史上最高にアグレッシブなものとなっている。なにが起きたのだろうか?

最先端の超アグロ環境を紐解く

今現在(2018/05/14)、Magic Onlineのメタゲーム上位トップ5デッキは次のようになっている。

  1. 1. 「人間」(7,33%)
  2. 2. 「親和」(5,26%)
  3. 3. 「《虚ろな者》」(5,26%)
  4. 4. 「ジャンド」(3,73%)
  5. 5. 「バーン」(3,32%)

リストを見てわかるとおり、5つのデッキの内4つが”超アグロ”デッキで、「ジャンド」は”ただの (そして唯一の)”ミッドレンジデッキだ。今Magic Onlineでリーグをやると、5回戦中必ず2、3回はアグロに当たる。プロツアー『イクサランの相克』の前は1回ぐらいしか当たらなかったのと比べてもかなり多い。

どうしてこのようなことが起きたのだろうか?簡単に言うと理由は2つある。

スレイベンの守護者、サリア虚ろな者

1つめは、皆が「人間」と「《虚ろな者》」は一時のブームだと思っていて、実際にはかなり強いデッキだということに気付くのが遅かったことだ。このことは生来のアグロプレイヤーたちに2つの強力なデッキという選択肢を与えただけではなく、ほかのアグロデッキをより良いものへと変えることにつながった。「人間」と「《虚ろな者》」を見てほしい。どちらもコントロール戦略を打ち破るのに理想的な構成だ。

霊気の薬瓶翻弄する魔道士恐血鬼炎跡のフェニックス

強力な持続力と常軌を逸したスピードに加え、打ち消しや除去に対する多くの解答を持っているし、全体除去にさえある程度耐性がある。戦線が壊滅するのをうまく防いだり (例:《霊気の薬瓶》《翻弄する魔道士》)、あるいは単に全体除去なんて苦ともしないからだ (例:《恐血鬼》《炎跡のフェニックス》)。またその驚異的なスピードは (「人間」の場合は《スレイベンの守護者、サリア》の支援を受けながら)コンボデッキに対して1ゲーム目をできるだけ速やかに終わらせることを可能にする。単純に考えてこれらのデッキはとても速いから、相手がもたついているところにプレッシャーをかけるのに長けているんだ。

一方で、こいつらは防御に回るとかなりリソースを消費することになる。《スレイベンの守護者、サリア》は大量の (「ストーム」相手では時に無限の)クリーチャーたちの前ではお荷物だし、《恐血鬼》はブロックに回ることすらできない。そしてどちらのデッキも除去をプレイするという選択肢をほとんど完全に捨てている。こうしたことは他のプレイヤーにすぐに知れ渡った。「どうやらやつらは前のめりに立ち回るしか術がないぞ」ってね。これは「親和」の戦略と同じだが、「親和」は前述のデッキたちと比べてもさらに高い爆発力を誇る一方で、除去に対してはより弱い。「バーン」についてはいつも環境に3~5%程度存在するものだから、メタゲームには直接関係しないと思うね。

2つめの理由はもっと簡単なもので、《精神を刻む者、ジェイス》という"素晴らしい"カードの存在だ。

精神を刻む者、ジェイス

《精神を刻む者、ジェイス》はMTGを象徴する、すべてを1枚でこなせる素晴らしいカードだし、能力を起動するだけでゲームに勝利するよりも良い気分になれる。だからみんないつもこいつは”ぶっ壊れ”だと聞いてきただろう。だが、実際はちがう。「速攻」や回避能力を持つようなウィニークリーチャーたちで戦場を埋め尽くされ、バウンスするのが馬鹿らしい状況の時は言わずもがなで、早い話《精神を刻む者、ジェイス》は現環境のトップ3デッキに対してうまく立ち回ることができないんだ。ただ、それでもすべての青使いたちがこぞって使用する。ここがポイントだ。だからアグロプレイヤーたちはみんな青を蹂躙するのをやめないだろう。実際アグロプレイヤーは青使いと当たった時点で、相手が4マナのあまり役に立たないカードをプレイすることを約束されているようなものだからね。なぜかというと、《精神を刻む者、ジェイス》なしでは青同士のミラーになると勝てないから、デッキに積んでおくしか選択肢がないんだ。そしてそんなミラーというのは現段階ではあまり起こることではないのは確かだ。

アグロへの対抗手段の模索

事態が推移していくにつれ、こんな疑問が浮かび上がった。「じゃあ、俺たちみんなはアグロを使うしかないのか?」。でも俺がそうしなかったように、答えは明らかに「No」だ。いや、実際にはちょっと試したんだが……ばかげた質問だったかもしれないな。まあ忘れてくれ、先に進もう。

これらのアグロを蹴散らす方法はいくらでもある。一番頭に入れておくべきことは、こいつらは全部同じゲームプランをとるものの、その手段はデッキにより大幅に異なるということだ。これらのデッキはすべて、低コストのクリーチャーと打ち消しに対する耐性、クリーチャー間のシナジー (「人間」は《サリアの副官》+《幻影の像》。「《虚ろな者》」 は「探査」クリーチャー+《炎跡のフェニックス》《虚ろな者》+《炎刃の達人》の組み合わせ。「親和」はデッキ全体がシナジーを形成している)に依存しているという共通点はあるが、特定のアンチカードでこれら全てに対処することはできないということなんだ。

古えの遺恨安らかなる眠り

《古えの遺恨》は「親和」相手に大活躍だが、「人間」の相手はできない。また《安らかなる眠り》は「《虚ろな者》」を機能停止させるが、対「親和」では全く機能しない (白への信心を高めるかもね)、等といった感じで、アンチカードに頼ることはできない。だから、代わりにアグロに対して効果のある汎用的なカードをプレイする必要があるんだ。そして伝統的なアンチカードと比べるとこれらはあまりインパクトを持たないから、デッキ全体がすでにアグロに対抗できる術を持っていなければいけない。すべてのマッチアップにおいて”特効薬”みたいなものを用意するのは不可能なんだ。

誰もが思い浮かべる良い対抗策は「青白コントロール」で、打ち消し、ドローからビッグアクションへとつなぐ戦略をとるデッキだ。それで、アグロ対策のデッキ調整だが、最初に《アズカンタの探索》のような微妙なカードを取り除こう。次に、デッキの潤滑油として2枚ほど《前兆の壁》が欲しいところだな。

マナ漏出

《マナ漏出》?そんなものは要らないから、代わりに《糾弾》《神聖な協力》を1枚ずつ入れよう。

至高の評決

《至高の評決》?打ち消されない?どのみちパーミッションは今廃業状態だから、《翻弄する魔道士》と戦うために色々な全体除去を分けて使おう。

サイドボードに関しては様々な選択肢がある。現時点では《機を見た援軍》がかなり良いと思っているし、サイドボードに2枚、そしてメインに1枚突っ込むのさえありだと思うよ。俺は《悪斬の天使》みたいなもっと狂ったやつらも試してみたし、実際すごく気に入ったね。

こちらが俺の目に留まったリストだ (実はこいつがこの記事を書こうと思ったきっかけなんだ)。俺はこの男、Curryvoreが辿った道を追求する必要はないと思っているけど、このリストは環境に適応するためにデッキ調整する際にすごく参考になると思う。特に、彼が「人間」に対して解答を示してくれたのは興味深い。単体除去が少なく、必要なときに《スレイベンの守護者、サリア》を処理できないかもしれないが、代わりにクリーチャーを詰め込むことで土地を展開するための時間稼ぎを試みている。

しかしだ、すこしマナベースの負担になるとしても、俺は赤をタッチすることが問題解決への最短ルートだと思う。「ジェスカイ(白青赤)」はそんなに好きじゃなかった。《稲妻のらせん》がほとんどのマッチアップで弱いと思っていたからだが、俺はもう心を入れ替えたね。このカードを4枚採用するのは現環境では完全に正解だ。ライフ回復はとても意義深いし、Magic Online上では誰かが《等時の王笏》をサイドインしているのさえ見かけた。これは《突然の衰微》をサイドアウトした後のミッドレンジにも有効という点でも注目に値するね。ハンドアドバンテージを失うので相手の手札破壊に弱いはずだから、個人的にはこのカードは好きじゃないが試してみなければわからないね。

コラガンの命令台所の嫌がらせ屋クルフィックスの狩猟者

「ジャンド」もまた環境に適応するのが得意なデッキだ。これからたくさんのプレイヤーが手札破壊や《コラガンの命令》《台所の嫌がらせ屋》(大好きなカードだ)や《クルフィックスの狩猟者》(悠長すぎて好みではないね)と入れ替えるのを見ることになるだろう。

環境に適応しないという選択肢

しかしながら、もしモダンが嫌になったとしても心配はない。必ずしも毎ターン (あるいは毎試合)戦闘に奔走する必要はないからだ。モダンに立ち戻りたくなるデッキが少なくとも3つあるから紹介しよう。

ワームとぐろエンジンウルザの塔精霊龍、ウギン

1つ目はみんな知ってのとおり「黒緑トロン」だ。このデッキの好きなところは、戦略が対アグロに合致しているところで、少なくとも「人間」と「《虚ろな者》」には相性が良い。どちらのデッキも《ワームとぐろエンジン》《精霊龍、ウギン》に苦しめられることになるし、序盤にこれらの投下を試みるのに対して、相手はほとんどの場合妨害できない。だから前に言ったこととは逆に、特定の対策パーツをたくさん用意して苦手な「親和」に対処することもできる。

怨恨ぬめるボーグル夜明けの宝冠

ラインナップの次は「呪禁オーラ」だ。こいつはアグロに対してとても相性が良いぞ。巨大な「絆魂」クリーチャーを作り上げてから攻撃、それだけでゲーム終了だ。「人間」相手に《スレイベンの守護者、サリア》を2ターン目に出されると動きがとれなくなるというちょっとした懸念もあるが、逆に言えばそれぐらいしかない。このデッキはずっと同じリストしかないし、退屈だろうから掲載はしないけど、アグロをメタって調整する必要も特にないだろう。一番ポピュラーなリストを使えばいいと思うよ。

最後にとっておいた、より刺激的な選択肢は古典的な「青赤ストーム」だ。オンラインでどんどん頭角を現してきたデッキで、俺はこのデッキの自分の手札でゲームを転がすシンプルな戦略が大好きだ。こちらの邪魔をしたくないって?俺もだ。相手は速い?こっちの方が速いさ。除去をかいくぐって勝てるって?まあ俺が何をするか眺めてるんだな。

ぶどう弾炎の中の過去パズルの欠片

こいつは非常に古典的なリストだが、細部が巧妙に調整されているおかげで依然興味深いものに仕上がった。《ぶどう弾》を3枚採用したのは特に気に入っている調整で、《スレイベンの守護者、サリア》に確実に対処できるし、コンボ始動の《炎の中の過去》につなげるまで2、3ターン稼いでくれるだろう。これは言わずもがなだが、《パズルの欠片》は遅すぎるからコントロールやミッドレンジ相手用にサイドにとっておいたほうが良い。

遵法長、バラルゴブリンの電術師

なぜこのデッキが良いかというと、アグロは普通の手札だったら4ターンキルができるが、「青赤ストーム」は《遵法長、バラル》《ゴブリンの電術師》が生き残れば、それよりも1ターン早く勝負を決められるからだ。だから先手だとかなり有利だし、後手でも不利になるということは決してない。

それと、「青赤ストーム」に有効だがアグロ相手に腐る、手札破壊、打ち消し、《ヴェンディリオン三人衆》といったカードは採用されにくいのもこのデッキにとって追い風だ。

紹介した通り、いまだにモダンは開けた環境だ。コントロール、ミッドレンジ、そして真正のコンボデッキだって、適応する努力さえすれば戦える。さあ、アグロを蹴散らす時だ!

また会うときまで。

ピエール・ダジョン

この記事内で掲載されたカード

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