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勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ!vol.5

2014/05/02 00:00 

    • 高橋 純也
    • コラム


 半年前に遡ったある夜。当連載会議はタイトル案を巡って難航していた。

 内容はおおまかに決まったものの、わかりやすくて覚えやすく興味を引くタイトルが意外と思い浮かばなかったのだ。そんなこんなで各人が悩み始めてから小一時間あまりが経ち、ダジャレやオマージュへと話題が飛び火したところで、ふと過去の僕の失言にスポットライトがあたった。

 忌まわしき青白GAPPO絡みのエピソードなので、その滑稽さも相まってなんだか面白くなってきた僕たちは、「いいじゃん。これにしよう」と笑いながらタイトル案に大きな丸をつけたのだった。

 さて、あれから半年が経った現在。僕は「勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ」というタイトルに決めたことを若干後悔している。

 確かに耳覚えの良いタイトルではあるのだが、少なくとも僕だけは反対しなければならなかったんじゃないかと思うようになったからだ。

 なぜかというと。

 今の僕では「勝ちたいんです(あるいは上手くなりたい)。どうしたら良いですか?」といったありふれた質問に対して、歯切れのいい答えを返すことができないからだ。

 具体的な質問に対して回答することはできるのだが、うまくなる、あるいは勝てるようになる、といった抽象的な内容についてコメントすることは難しく感じる。おそらく物事を部分的にとらえることはできても、大きな枠で見た時の傾向を意識したことが少なかったからだと思う。

 今の自分に何が足りていなくて何を手に入れたいのかだけに興味があり、自分以外の人がどんな悩みを抱えてきたかに対しては無関心だったのだ。自分が恵まれた関係の中で気ままな質問者であることが多かったからかもしれない。

 質問される側、頼られる側になって初めて、一般的なステップアップ方法や目安について悩むようになった。そして、その悩みはいまだに消化されないまま僕の中に残っている。

 「もっと長い目でよく考えて練習するといいと思います」

 「僕は~~してきました」

 このように回答したこともあった。時間をかければ誰だって今よりはうまくなるだろうし、僕に聞いてくるのだから僕の経験を話してもいいだろうと思ったのだ。

 ただ、少し考えればわかることだが、この回答をもらったところで質問者は満足はしないし、実際に回答のおかげで上達することも少なかっただろうと思う。感謝されつつも腑に落ちない表情を向けられるのは少し辛かった。

 お互いにある抽象さがいけないのかと思い、悩みの詳細を聞き質したこともあったが、質問者自身も悩みの中身を正確に把握していることは少なく、かえって話が拗れてしまうことも多かった。もちろん僕のコミュニケーション能力にも問題はあるのだが、そこで気が付いたことは、そもそもプレイヤーが自身の現状と問題を把握して次のステップを確認できるような枠組みがマジックにはない、ということだった。

 たとえば小学生の水泳の授業における「級位」のような、技術レベルや知識量でのプレイスメントをあまり聞いたことがないことを思い出したのだ。たしかに目安がなければ自分に足りない内容も目標もなかなか思いつかないのは当然だ。

 今の自分は初心者なのか中級者なのか。

 足りていない要素とは何なのか。

 効率よく上達していくためには、自分の位置や状態を確認できる地図や枠組みは欠かせないものだ。闇雲に様々なものへとチャレンジしても、状況と結果は都合のいいように転がってくれない。

 そこで今回は目安となるプレイスメントのモデルを紹介し、そのうえで次のステップに進むために必要な要素と手法について考えていく。

 「今よりも勝ちたい。うまくなりたい」

 そんなシンプルな悩みへの特効薬を探しに行こう。



1.二つのモデルからヒントを探そう

 まずは先人たちの発想からヒントを得ることにした。

 技術というものは一つ一つの積み重ねを経てステップアップするもので、誰もが最初は初心者だ。さらにステップアップとは突如として起こるものではない。ステップの存在を確認しなければ次の段階に上ることはなく、したがってステップアップするためには、現状の自分の立ち位置と、目前にあるステップの概要を理解する必要があるからだ。

 つまるところ上達への近道とは、自分の「立ち位置」と「課題」を知り、次のステップに到達するまでのレベルを知ることである。

 そこで今回は、「立ち位置」と「課題」についてのヒントを得るために、技術習得にかかわるモデルを2つ紹介する。あくまでも理論ベースのものではあるが、後ろの節では、これを具体論にまで落とし込むつもりだ。


■ドレイファスモデル

 リファクタリング・ウェットウェアという本がある。シンプルなタイトル通りの内容で、ソフトウェア開発において人間の脳がどのように機能するかを多分野から考察したものだ。思考法や学習方法についても言及されており、そこには「ドレイファスモデル」という、技術の熟練度を5段階評価したモデルが紹介されている。







 これは1970年代にドレイファス兄弟によって作られた技術習得に関するモデルで、民間会社のパイロットや世界的に有名なチェスの名人など、ある分野におけるエキスパートを観察対象に研究された。

 これによると初心者から達人へと移行するにつれて大きな変化が見られるという。その変化とは単なる知識の増加に留まらず、外部の認識や情報処理、新しい技能を習得する方法に違いが見られ、それらを判断する基準も、画一的なルールに縛られることが少なくなる傾向があったというのだ。

 画一的なルールと、文脈もしくは状況(コンテキスト)に依存した直感

 初心者から達人までの道程にあるキーワードはこの2つだ。ルールは初心者から上級者へと至るまでに重視され、直感は熟練者や達人のステージに登るためには欠かせない。この2つの意味と仕組みの理解ができれば上達は早まるだろう。


■アンコロキングのZoneモデル


 これは佐々木大輔さんのブログに紹介されていた配信で目にしたものだ。アンコロキングの『麻雀雑談BAR』というタイトルの配信で話題に挙がっていた内容(残念ながら動画ログは消えてしまっている)を佐々木さんがブログでまとめたモデルは、以下のようなものだった。





 これは麻雀およびマネーゲームに参加しているプレイヤーを対象としたモデルだ。

 確率的優位性、執行力、Zoneへのアクセス

 この3つの壁が、プレイヤーたちの間に隔たっていると語られた。

 Loserには知識が足りず、定石やルールを通じて確率的優位性を学ぶことによってステップアップすることができる。

 Bubbleには知識は備わっているが、状況判断力や行動の正確性に難があるため、執行力が向上することでステップアップすることができる。

 Professionalは正確な状況判断と十分な知識を備えている。しかし、その情報源と判断基準は限定された範囲のものでしかなく、Masterとなるためには、Zoneや無意識化のデータベースへとアクセスして膨大な情報に触れる必要がある。(ここでいうZoneや無意識下のデータベースとは、ドレイファスモデルでいうところの達人の直感である。より多くの状況における判断材料を求めて、些細な出来事や経験、表在化しない情報などを拾って整理する手段と場所がそれだ)



 技能の全体傾向をとらえたドレイファスモデルと、プレイヤーを技能レベルで区分けしているZoneモデルとは根本的に異なるものだが、切り口を除いた基礎的な部分については似通っているように思える。

 明確に異なる特徴として、Zoneモデルにおいては各ステージからステップアップするためのヒントが示唆されている点が挙げられる。これはモデル全体を通じた軸がないことを表してもいるが、立ち位置だけでなく、それぞれが向上するヒントを見つけられることは素晴らしいと思った。



2.まずは自分の位置を確認してみよう

 ここまでにざっと2つのモデルを眺めてみたが、その内容だけを材料に自分の立ち位置を認識することは難しかったかもしれない。




 これらは一つ一つの技術について自分の立ち位置を判断するステップを簡単にまとめたものだ。

 まだ言葉は難しいかもしれないが、ここで1つの例を通してみるとイメージがつかめるかもしれない。




 これは見慣れたシチュエーションかもしれない。対戦相手が繰り出したマナクリーチャーを除去するか否かを判断すべき状況だが、あなたならここで何を考えるだろうか。

 まずは各ステップに応じた反応例を見てみよう。


◆初心者

 MTGの格言には「マナクリーチャーは除去しておけ」というものがある。手数やゲームスピードを加速するマナクリーチャーは強力なカードだからだ。
 そこで、その格言を画一的なルールの1つとして適用し、《ショック》《エルフの神秘家》を除去することにした。


◆中級者

 初心者同様に画一的なルールを適用して除去することを考えてみる。そして現状のシチュエーションが1ターン目だったため、《エルフの神秘家》を除去することに決めた。
 なぜなら最序盤であればあるほどにマナクリーチャーが活躍すると考えたからだ。何ターン目のマナクリーチャーを除去しないかまでは想像がつかないが、1ターン目のマナクリーチャーは除去するべきだと感じた。


◆上級者

 マナクリーチャーを除去する基準は、それが生み出したマナを有効利用されてしまうかどうかだ。
 手札が多い序盤においては、増加したマナを余すことなく使われてしまうため強力だが、手札が減りマナベースも十分に揃っている終盤では、増加したマナの恩恵も少なく余分なカードかもしれない。
 また、《歯と爪》デッキの8マナ目のマナクリーチャーなども除去すると決めている。その1マナの差はゲームの勝敗に直結するだろうからだ。
 手札の枚数とマナベース、デッキの概要を考慮して《エルフの神秘家》を除去するかを判断する。


◆熟練者

 上級者が下した判断に加えて、自分が除去に使用する《ショック》の価値について考えた。20点のライフがある序盤では対戦相手の強力なカード1枚と交換するほうが好ましいが、残り数点まで減らした中盤以降では、自分のドロー1枚当たりの期待ダメージを考慮して除去するかを判断した。
 たとえそのマナが有効に使用されたとしても、《ショック》が与える2点がより早く勝利に結びつけば関係ないからだ。あくまでもどちらが勝利に近い判断であるかという点こそが肝となる。


 以上が各ステップの具体的な反応例である。
 
 もちろん、上に挙げた判断ができれば初心者や上級者だといっているわけではなく、ルールに対する理解や情報の解釈についての基準の確かさや柔軟性の目安を紹介したつもりだ。

 また、ドレイファスモデルでは、個々の技術それぞれについての習熟度を表している。つまり、「マナクリーチャーへの対処技術は上級者」だが「リミテッドの戦闘技術は初心者」だということも珍しくないわけだ。

 自分が何について未熟で、何が得意なのか。

 一つ一つの技術についての習熟度を考えていくと、自分の強みと弱み、そして課題点は自然と見つかってくるだろう。



3.ステップアップ(初級編)

 「マナクリーチャーへの対処」という例を通して各ステップの反応例を取りあげてみた。あなたがいくつかの技術においてどのステップに立っているかも大まかな目安がついたのではないだろうか。

 それではいよいよステップアップの方法を紹介しよう。

 まずは初心者と中級者に相当する段階から抜け出すための鍵について話していく。


◆初心者からのステップアップ

キーワード:知識量

 自分が知らない状況について考えることは難しい。何について考えればいいかすらあやふやだからだ。

 つまり、初心者から脱却するための鍵とは、知識量を増やすことにある。


・方法Ⅰ:定石を学ぶこと

 まずは「間違いではない行動」を知ることが重要だ。自分で正しいと思う行動に思案し、見当をつけて試行錯誤することは有意義だが、今の段階ですべきではない。とりあえずは基本とされる「正しい確率が高い行動」といった目安を知ることことのほうが、より優先度の高い作業だ。

 先の例にもでた「マナクリーチャーは除去しろ」などといった格言でもいいが、とにかく限定的な状況で自分が行動する指標を多く身に着けることを目指そう。


・方法Ⅱ:動きを真似ること

 初心者の段階では、正しさは問わずして、とにかく他人の行動を真似て体験することが重要だ。

 状況→行動

 という組み合わせをより多く覚える作業である。

 行動の理由についてはまだ理解しなくてもいい。考えるよりも慣れる段階だからだ。定石が座学ならば、真似は実践学習である。どちらも自分の未体験ゾーンを減らすことを目的にしている。


◆中級者からのステップアップ

キーワード:知識の質

 限定的ではあるもののある程度は知識は備わってきた。ただ、それらがどのように、どれだけ有用なことかについては疎い。そこで次のステップに進むための鍵は、それらのメカニズムと効果の大きさを知ることである。


・方法Ⅰ:定石を疑うこと

 これまで絶対の知識だと信じて身に着けてきた定石は、数が揃ってくるにつれて疑わしいものに見えてくる。そのまま真似するには極端な行動だと感じるようになるのだ。

 まず、定石とは、前提条件を緩くした「大体正しい」知識であることが多い。

 そこで、いつ、どのように、正しい知識であるかを整理することが必要となる。マナクリーチャーの例だと、1ターン目のものや相手のデッキの構造次第など、条件を付けて優先度を考えることが重要な一歩である。


・方法Ⅱ:意味を真似ること

 行動そのものを真似る(動きを真似る)段階は、初心者から抜け出すまでに通った道だが、これからのステップで必要なのは、行動する意味を真似ることだ。

 定石や知識を疑う一環として、これまでただただ真似してきた行動についても理由を考える必要がある。すると、行動は違えども行動した目的や意味は同じ、あるいは、行動は同じでも目的や意味は違うことが見えてくるだろう。

 ここで重要なのは、これまで定石や行動に感じた違和感は、行動と意味のギャップが原因だということだ。

 状況→行動

 ではなく、

 状況→意味・目的→行動

 と結び直すことで、そのギャップは解消することができる。

 目の前の「すべての《エルフの神秘家》」を倒すのではなく、目の前の「危険な《エルフの神秘家》」を倒すことができるようになれば中級者のステップは突破できたといえる。


◆中級者以前のまとめ

 根本的に情報が足りないので、とにかく情報量を手にすること。

 あふれてきた情報から質のいいものを選択していくこと。

 この2つが中級者までのステップで重要な取り組みだ。そのためには何事も真似することが上達への近道となる。

 より効率のいい情報を得ようと初めから深く考える方法もあるが、その段階では深く考えられるだけの基準や前提を持っていないことが多い。そこで、まずは真似して形から入り、後にそれを修正することが理想だろう。



4.ステップアップ(上級編)

 ここからは中級者の段階を突破できた人たちが更にステップアップするための鍵を紹介する。

 これまでのステップで習得したことは、「状況に応じて、目的を思考し、それに沿った行動をとる」ということだ。パッと見ると完璧である。

 ただ、パッと見て完璧なだけで、まだ完璧ではないのだ。

 ここからステップアップするためには、作業をより完全な内容に近づけていくという努力が必要となる。そのために欠かせない方法が以下のものだ。


◆上級者以降のステップアップ

キーワード:全体像、正確性


・方法Ⅰ:ストーリーを理解する

 まず、あなたがこれまで処理してきた「状況」という情報はとても不完全なものだ。上級者以降とそれ以前では、この「状況」についての判断力が大きく異なる。

 たとえばリミテッドの一幕で、対戦相手のおもむろな攻撃に対してブロックするかを悩んだとしよう。





 あなたは対戦相手に手札の枚数を尋ねて、うーん3枚かぁと唸り、4/4クリーチャーを失う価値と戦闘トリックを使わせることを天秤にかけて、自分のライフを確認してブロックしないと決めた。

 これが多くの中級者の思考だが、おそらく熟練したプレイヤーに相談すると返ってくる答えはこれだろう。

「それより前のターンの動き教えて」

 ゲーム開始時かもしれないし、中盤に膠着したターンがあればその時からかもしれないが、とにかく攻撃されたという状況以前の情報を求められるだろう。戦闘トリックの有無は不思議な攻撃をされて初めて意識に上るが、それを考慮すべき段階は常に存在するため、それ以前のゲーム展開も判断すべき状況情報の一つとして考えるべきだからだ。

 目的と意味を決定するには局所的な情報では足りないことが多い。そこで、より正確な状況判断を下すために、それ以前やそれ以後の展開を考慮した情報を「状況」として理解することがステップアップの鍵となる。

 これを身に着けるには、自分のゲームを棋譜を辿るように思い返す癖をつけるといいだろう。すると、すべての状況を再現できないことに気が付くと思う。そして、その思い出せない情報こそが、あなたが状況判断をする際に見落としている上達への鍵かもしれない。


・方法Ⅱ:より正確なアクションをする

 これはすべてのプレイヤーにとっての課題だ。達人になってもこの悩みには付き纏われるだろう。技術や知識はあくまでも投資効率のいい点数稼ぎのテクニックでしかなく、正答率を競う上級者以降では行動一つ一つの正確性が問われていく。

 この正確さとは行動だけではなく、状況判断、意味や目的の理解においても重要だ。1つの思考、1つの連結、1つの行動。それぞれを無駄なくエラーなくこなしていくことが求められる。

 そういった小さな差の積み重ねが、大きな結果の差に繋がっていくのだ。

 この正確なアクションを身に着けるには、より多くの反復練習と、正確なアクションを下すための環境作りが必要だ。前回の連載において紹介した取り組みはどれも役に立つだろう。前回のテーマは「うっかりなミス」だったが、裏を返すと、より正確な行動をとるためにはどうする、ということでもある。


◆上級者以降のまとめ

 ストーリーを理解するためには、より多くの情報を手にする必要がある。

 正確性を追求するためには、より無駄な情報を削ぎ落とす必要がある。

 手にするのか、削るのか。一見すると矛盾しそうな方法論ではあるが、要するに「自分が処理できる限界量を知り、必要なときに必要な分だけ情報を手にすること」が上達の鍵である。

 その方法としては、棋譜の再現システマチックな基準を作る、といったことがお勧めだ。前者は見落としている情報を探るため、後者はより正確な判断を下す工夫として効果的なはずだ。 



5.上達するための4つのポイント

 それでは、ここまでにそれぞれのステップから上達する方法について話してきたが、これは、あくまでも1つの技術についてどのように向上させるか、という取り組みでしかない。たとえば0から剣道を学ぶときに何をすればいいか、といったガイドでしかないのだ。

 しかし、人は誰しもこれまで経験してきた何かについての蓄積がある。剣道は初心者でも、サッカーは上級者な人もいるのだ。そして、剣道とサッカーの間に何かしらの共通点を見つけることができれば、サッカーの技術を流用して剣道の技術を向上させることに役立てることができるだろう。

 距離感、重心の置き方など。人によって見つける共通項は違うと思うが、それぞれに感じたものを有効に利用することが望ましい。

 そして、最後になるが、この節では僕個人が考えている共通項の見つけ方や上達の手段を紹介しようと思う。これまでのものが理論的なもの、ここで紹介するものは僕の経験則だと考えてほしい。


一.よく質問すること

 疑問を持つことは難しくないが、それを質問に変換することはとても骨が折れる作業である。わからないという感覚を、他人にも理解できる言葉で伝える必要があるからだ。なんとなくのもやもやした内容では、どうしても相手に悩みが伝わってくれない。そこで、自分が何を知りたくて何がわからないのか、を言葉に整理して考える段階が大事だ。これは回答者から助言をもらうためでもあり、質問という作業を通じて、自分が悩んでいる内容が何なのかを整理するためでもある。

 この「自分の考えを整理する」という作業はとても有意義で、何となく理解したつもりになっていた知識や行動の不確かさを洗い出すことができる。そのため、新しい知識や悩みが思い浮かんだ時には、自分の考えを整理するためにも、言葉に直して質問することをお勧めする。最初は難しく感じるかもしれないが、どれもこれも慣れの問題である。考えを整理することも質問することも上達には貢献するので、積極的に質問する機会を作ろう。 
 

二.よく復習すること

 これも「理解したつもり」という言葉に当てはまるが、身に着けたと思っていた技術が身についていなかったということは多くある。むしろほとんどがそうだといってもいい。1週間たったらおぼろげになってしまったり、できると思っていたことができなくなっていたり、といったことは珍しくない。そこで技術や知識を確実に身に着けるためにも復習はとても重要な作業だ。せっかく新しい考え方やアイデアを知っても、次の日に忘れてしまったら、それほどもったいない話はないだろう。

 僕は週記でメモを作っているが、新しいことに気が付いたらメモする程度でもいいかもしれない。時折振り返って確認できるような書置きはとても便利なので、面倒に感じない程度で実践することをお勧めする。


三.よく他人のゲームを見ること

 自分の力だけで自分の行動を反省して修正することはとても難しい。それは自分の行動のほとんどは、正しいと信じて起こしたものだからだ。そのため、多くの場合では、他人からのアドバイスや悲惨な結果といった外部からのフィードバックがない限り修正することはできない。しかし、1人でも修正できる方法がある。それは他人のゲームを見ることだ。ゲームに拘らずどんな技術でもそうだが、他人と自分では各所で違いが見えてくる。そして、その違いを検討することで自分の弱点が正されていくだろう。

 ただ注意しなければならないのは、漫然とそれを見ないことだ。実際に自分が選択や行動しているわけではないため、他人がとった選択をあたかも、いつも自分も同様にしていると勘違いしてしまうことがある。「自分が仮にその立場だったら」と、のめりこむくらいの気持ちで観戦するといい結果が得られるだろう。 


四.よくコミュニケーションをとること

 ここまで述べてきた内容からも明らかではあるが、自分の力だけで上達しようと努力することは、時間的にも情報量的にも非効率な行動だ。なによりも効率的であることが重要だ、とまではいわないが、非効率的である理由もそんなにないことだろう。そして効率的な取り組みとは、すなわち他人と自分の知識や経験を同期させることである。質疑応答に始まり、自分の経験だけでない情報を糧にして学習することは上達への近道である。

 そのため、技術交流や質疑応答だけに留まらず、他人とコミュニケーションをとることは、より楽しく、より強く、より効率的に取り組むことができる理想的な方法だ。自分だけでなくお互いを高めあうことができれば尚いい環境だといえるだろう。仲のいい人とだけでもいいし、より多くの人とでもいい。とにかく自分だけで取り組むよりはみんなで物事に挑もうということだ。


 この4つは僕が上達するために重視している要素だ。

 僕は未だになんの達人にもなったことがないので、達人に至る道についてガイドできないことはもどかしいが、この記事が上達するために悩んでいた誰かの力になれたならば幸いだ。

 「勝ちたいんです。どうしたらいいですか?」

 この記事を書くために考え直し、幾たび整理しても未だ、この質問への答えは見つからなかった。僕の力量が足りないのか、まだ見えていないものがあるのか、それとも答えなどそもそも存在しないのか。

 この連載を終えてまたこの質問に立ち帰った時にきれいな回答を見つけていることを期待して、今回は筆を置くことにする。

 それではまた次回に会おう。